「第拾六号 貌利太泥亜コンシユル エスクワイル エーブル・エヂ・ガワル
第拾弐號之書翰披見せり、ミストルハウルより我商人左兵衛江相懸り候出訴一件、過日返翰およひ候趣ミストルハウル江被相達候處、猶同人より其件江之答書差出回答を請るゝ趣に而、右写相添件々被申越一覧致し候處、右答書中最前ミストルハウル出訴以来取扱方大に延引致し等閑置候と之趣に候得とも、右一件ニ関かる處の金高莫大ニ而、無謀に事を図り候儀ニ者難相成、返済方手續等事實之處為取調候中、時日も押移回報及遅延候ニ付、過日見込之趣一息申入候儀ニ而、出訴之趣打捨置、空敷時日を費し候儀ニ者無之候、且會津役人之伝蔵軽薄之儀ニ有之をも、其侭ニ致し置候趣ニ候得共左兵衛より會津家に懸り候一件者、兼て同人より出訴およひ、當時調中ニ候得共、右者全左兵衛と會津家と之出入ニ而、前件ミストルハウルより左兵衛江懸り候一件と者全く別事に有之、猶必用之證書被差越候得共、返却も不致又落手致し候、告知も不致旨ニ候得共、最前右一件ニ付貴下第壱号之書翰被差越候節、訴状写添られし而巳ニ而、證書等者落手不致事ニ候間、右等之件々猶ミストルハウル江諭告被致度其余答書中之趣ハ了承致し候、此段回答旁申入度如斯候、謹言
慶應三卯年四月十四日 杉浦兵庫頭（花押）」