「第拾四号 貌利太泥亜コンシユル エスクワイル エーブル・エヂ・ガワル
第壱號之書翰披見せり、貴国商人ミストルハウルより我商人山田屋左兵衛江相懸り候金子滞一件に付、ミストルハウル申立書相添被申越趣其意を了せり、右ニ付一躰之始末柄等当節専ら取調中ニ者候得共、品々入狂ひ候儀有之、未タ十分之取調難相成予におゐて甚氣之毒に思へり、今左兵衛之身代とミストルハウルニ関係せる金高とを以較量するに、即今渠は窮迫之時に至り、如何様厳敷致し候而も、迚も一時に返金は六ヶ敷かるへし、依之予思ふに今急遽に事を図んとせは我国銭を以身代限取上け相渡たり外所置無之、弥かくのことくせはミストルハウル之損失は目前に知るへし、又徐々に事を図らば渠再生の恩に感し、百方死力を尽し壱両年之内ニ者返済の期あるに至らんか、右様致し候ハゝ予か所存ニ而者何れ之時にか金高之内度々にミストルハウル請取候様可相成、右ニ而渠返金惣高相減可申、もし右期限中に皆済難致候ハゝ、其節に至り右左兵衛ニ付国典を以取扱、同人所持のもの売拂、右返金残高之始末可取斗候、尤爰に述る處は唯予の意中に出るものにして必期してまつへきものにはあらされとも、貴下には右之情状注意被致、ミストルハウル江も諭告被致度候、此段申入候、謹言
慶應三年卯三月廿五日 杉浦兵庫頭（花押）」